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手術の翌朝、
「ホミさん、ホミさん」
と呼ぶ、看護師の声で目覚めた。
時計を見ると7時半であった。
まだ眠っていたいのに。
「これから尿の管を取りますからね。おトイレへ行っても大丈夫だからね」
看護師は言った。
この言葉に昨夜の恥ずかしい場面が蘇った。
早朝から尿の管を外しに来たとは、さては、
夕べか今朝の申し送りの際に、
「ホミさんは、思いっきりおしっこをしたいそうだ」
と伝わっているに違いない。
看護師は尿の管を外してから、
「パジャマに着替えてもいいですよ」 と言い、
私が身に付けているもうひとつの管の状態を確認した。
「くれぐれも管に気をつけて下さいね。これが外れちゃったら大変なコトになるから」
と付け加えた。
もうひとつの管とは、「入院2日目」で記した、術後に入れられた管のことである。
私は気の抜けた声ともならない声で返事をし、早速ベッドから起き上がろうとした。
が、首が痛くて起き上がれないのだ。
そこで看護師にベッド(頭の方)を上げてもらい、起き上がるという辛い動作をせずに済んだ。
立ち上がり、着替えのパジャマをロッカーから出そうとも、
上の棚にしまっておいたので取り出すのに不便であった。
首が、上、左右に動かすのに苦痛なのだ。
何とか、取り出し着替えることになったが、管がぶら下がっているため
着替えるのに不便さと緊張感を味わった。
パジャマに着替える前の私は、浴衣式の寝衣とT字帯である。
憶えはないが、術後、ベッドに移した際に看護師が着替えさせてくれたのだ。
何とか、パジャマに着替えたが、管が取れるまで毎日この緊張感を味わうのかと思うと
ちょっと苦痛であった。
着替える時に、管から出ている液を見たが、ほんの少量だがリアルであった。
何がどうリアルなのか自分でも不明であるが、その点はあまり深く追及しないでいただきたい。
着替え終えると看護師が、管から出ている液の容器のカバーを持ってきてつけてくれた。
やはり、そのままだとリアルなのだ。
カバーは手作りの巾着袋で、袋のひもには書類などをはさむクリップが付いており、
容器をカバーに入れ、それをパジャマの胸ポケットに入れ、クリップをポケットにはさむと
邪魔にならなくて安全、というしくみであった。
なるほど、これなら寝ている時もあまり気にならない。
そして、朝から点滴が始まった。点滴をしている間、また眠たくなってきた。
起きていても、テレビを観ることも読書も苦痛に感じるので眠たくなった方が
都合がよい。
前にも記したが、毎朝10時ころから診察が始まる。
10時の診察前に看護師がやってきて、管から出ている液を取り出し量をはかっていた。
そのうち、診察に呼ばれたので点滴を付けたまま処置室へ行った。
この日の担当は、執刀医である主治医であった。
様子などを聞かれ、傷の具合、消毒などを行った。
その後、病室へ戻り、ボーッとしていると、昼食の時間になった。
私の分の食事も運ばれてきた。
朝食はなかったが、昼からは食事開始なのだ。
お腹は空いているのだが、あまり気が進まない。
何しろ、口を動かすことが苦痛なのだ。
でも、流動食なのでそれほど苦痛もないだろうと思い、
まだ終わらぬ点滴を付けたまま食事を始めた。
流動食は始めての経験である。当たり前だが、噛まずに飲み込むだけの物ばかりである。
しかし、飲み込みもかなりの苦痛であった。
お茶等は普通の飲み方で飲めないので、持参したストローで飲んだ。
食事の後、丁寧な薬剤師が持ってきてくれた抗生剤を飲んだ。
痛み止めは迷ったが、それほどの痛みでもなかったので飲まなかった。
食事の後、看護師が薬の殻のチェックを行う。
食事が終わってから、口の中が痛いことに気が付いた。
もしかしたら、手術の際に口にはめた器具のせいかもしれないと思った。
手術日の前夜にされた麻酔科医の話の中で、
「手術中に、口に器具を付けるので、歯が弱かったり差し歯の場合は、歯が抜けてしまうことがあります。
歯が弱くはありませんか? 器具と言うのは、よくドラマでやってますよね。患者さんが手術中に口にはめているあの器具のことです。
」
と言っていたことを思い出した。
器具をはめた時や、はめている最中のことは、麻酔がきいている私には記憶はない。
とにかく、これほどの苦痛は今までに味わったことがなかった。
この日は話をすることも苦痛で、話すことができたとしてもゆっくりであった。
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